有害大気汚染物質モニタリング調査

1.有害大気汚染物質のモニタリング調査(東京都及び八王子市)

 本調査は、大気汚染防止法第18条の44第1項及び第22条第1項の規定に基づき、東京都内における有害大気汚染物質について、優先取組物質を中心に汚染の状況を把握・評価し、大気汚染防止対策の推進に資することを目的としています。

測定項目(28項目)

物質の分類 優先取組物質 左記以外の物質
揮発性有機化合物
(18項目)
ベンゼン
トリクロロエチレン
テトラクロロエチレン
ジクロロメタン
アクリロニトリル
塩化ビニルモノマー
クロロホルム
1,2-ジクロロエタン
1,3-ブタジエン
酸化エチレン
塩化メチル
トルエン
m,p-キシレン
o-キシレン
エチルベンゼン
スチレン
1,1-ジクロロエタン
四塩化炭素
アルデヒド類
(2項目)
アセトアルデヒド
ホルムアルデヒド
重金属類
(7項目)
ニッケル化合物
ひ素及びその化合物
ベリリウム及びその化合物
マンガン及びその化合物
クロム及びその化合物
六価クロム化合物
水銀及びその化合物※
多環芳香族炭化水素 (1項目) ベンゾ[a]ピレン

※ 大気汚染防止法改正により、水銀及びその化合物は2018年(平成30年)4月1日に優先取組物質から除かれたが、水銀等による大気汚染状況を把握することは重要であるため、引き続き測定している。

測定地点 地点数 区部 多摩部
住宅地域等に
設置している
一般環境大気測定局
(一般局)
12 中央区晴海局
国設東京新宿局
目黒区碑文谷局※1
大田区東糀谷局
板橋区氷川町局
練馬区石神井町局
足立区西新井局
江戸川区春江町局
八王子市片倉町局
八王子市大楽寺町局
小金井市東町局 ※2
東大和市奈良橋局
道路沿道に
設置している
自動車排出ガス測定局
(自排局)
2 京葉道路亀戸局
環八通り八幡山局
バックグラウンド 1 西多摩郡檜原大気測定所

※1 世田谷区世田谷局の改修工事に伴い、2021(令和3)年4月より目黒区碑文谷局で測定を実施

※2 2023(令和4)年4月より、小金井市貫井北町より移転

測定結果の概要(環境基準のある物質のみ)

ベンゼン

 都内における大気中のベンゼン濃度の推移は、図に示すように調査開始時より大幅に低下し、近年は下げ止まり傾向にあります。
 これは、2000年(平成12年)にガソリン中のベンゼン濃度の規制強化(含有量1%以下)、2003年(平成15年)にガソリンスタンド等の貯蔵施設のベンゼンを含めた炭化水素類の排出規制等の各種大気汚染対策が進められてきたことを反映した結果と考えられます。
 2022年度(令和4年度)の調査結果によると、都内の一般環境の平均濃度は0.89μg/m3、沿道(自排局)の平均濃度は0.84μg/m3で、2004年度(平成16年度)以降、連続して全調査地点において環境基準(3μg/m3)を達成しています。

ベンゼン年平均
 

トリクロロエチレン

 大気中濃度の経年変化は、下図に示すように、長期的には低下傾向にあり、事業所からの排出量が低減してきていることと一致しています。2022年度(令和4年度)の調査結果によると、都内の一般環境の平均濃度は0.91μg/m3、沿道(自排局)の平均濃度は1.1μg/m3で、いずれも環境基準(130μg/m3)を大幅に下回りました。なお、2018年度(平成30年度)から環境基準が130μg/m3に引き下げられました。

トリクロロエチレン年平均

テトラクロロエチレン

 大気中濃度の経年変化は、下図に示すように、長期的には低下傾向にあり、事業所からの排出量が低減してきていることと一致しています。2022年度(令和4年度)の調査結果によると、都内の一般局の平均濃度は0.14μg/m3、沿道(自排局)の平均濃度は0.13μg/m3で、いずれも環境基準(200μg/m3)を大幅に下回りました。

テトラクロロエチレン年平均

ジクロロメタン

 大気中濃度の経年変化は、下図に示すように、長期的には低下傾向にあり、事業所からの排出量が低減してきていることと一致しています。2022年度(令和4年度)の調査結果によると、都内一般環境の平均濃度は1.4μg/m3、沿道(自排局)の平均濃度は1.3μg/m3で、環境基準(150μg/m3)を大幅に下回りました。

ジクロロメタン年平均

測定結果(Excel形式)

調査年度 結果概要(地点別・年平均値) 詳細結果(物質別・月別)
2022年度
(令和4年度)
令和4年度平均(エクセル:34KB) 令和4年度詳細(エクセル:106KB)
2021年度
(令和3年度)
令和3年度平均(エクセル:34KB) 令和3年度詳細(エクセル:106KB)
2020年度
(令和2年度)
令和2年度平均(エクセル:31KB) 令和2年度詳細(エクセル:101KB)
2019年度
(令和元年度)
平成31年度平均(エクセル:35KB) 平成31年度詳細(エクセル:106KB)
2018年度
(平成30年度)
平成30年度平均(エクセル:31KB)
※平成30年度のデータに誤りが見つかりましたのでお詫びして修正します(令和3年9月3日)。なお、修正箇所は太字下線で示しています。
平成30年度詳細(エクセル:117KB)
2017年度
(平成29年度)
平成29年度平均(エクセル:37KB) 平成29年度詳細(エクセル:124KB)
2016年度
(平成28年度)
平成28年度平均(エクセル:36KB) 平成28年度詳細(エクセル:124KB)
2015年度
(平成27年度)
平成27年度平均(エクセル:36KB) 平成27年度詳細(エクセル:122KB)
2014年度
(平成26年度)
平成26年度平均(エクセル:72KB) 平成26年度詳細(エクセル:1,491KB)
2013年度
(平成25年度)
平成25年度平均(エクセル:594KB) 平成25年度詳細(エクセル:3,127KB)
2012年度
(平成24年度)
平成24年度平均(エクセル:517KB) 平成24年度詳細(エクセル:459KB)
2011年度
(平成23年度)
平成23年度平均(エクセル:981KB) 平成23年度詳細(エクセル:323KB)
2010年度
(平成22年度)
平成22年度平均(エクセル:412KB) 平成22年度詳細(エクセル:432KB)
2009年度
(平成21年度)
平成21年度平均(エクセル:306KB) 平成21年度詳細(エクセル:276KB)
2008年度
(平成20年度)
平成20年度平均(エクセル:309KB) 平成20年度詳細(エクセル:275KB)
2007年度
(平成19年度)
平成19年度平均(エクセル:849KB) 平成19年度詳細(エクセル:324KB)
2006年度
(平成18年度)
平成18年度平均(エクセル:295KB) 平成18年度詳細(エクセル:324KB)
2005年度
(平成17年度)
平成17年度平均(エクセル:297KB) 平成17年度詳細(エクセル:302KB)
2004年度
(平成16年度)
平成16年度平均(エクセル:302KB) 平成16年度詳細(エクセル:339KB)
2003年度
(平成15年度)
平成15年度平均(エクセル:300KB) 平成15年度詳細(エクセル:277KB)
2002年度
(平成14年度)
平成14年度平均(エクセル:291KB) 平成14年度詳細(エクセル:268KB)
2001年度
(平成13年度)
平成13年度平均(エクセル:295KB) 平成13年度詳細(エクセル:292KB)
2000年度
(平成12年度)
平成12年度平均(エクセル:210KB) 平成12年度詳細(エクセル:283KB)
1999年度
(平成11年度)
平成11年度平均(エクセル:126KB) 平成11年度詳細(エクセル:168KB)
1998年度
(平成10年度)
平成10年度平均(エクセル:33KB) 平成10年度詳細(エクセル:156KB)
1997年度
(平成9年度)
平成9年度平均(エクセル:33KB) 平成9年度詳細(エクセル:152KB)
 

2.有害大気汚染物質連続測定結果(揮発性有機化合物)

東京都は、有害大気汚染物質のうち揮発性有機化合物について、公定法であるキャニスタ捕集バッチ式が毎月1回の24時間平均値の測定であることから、より詳細な濃度情報(1時間値)と気象計、NOX計、SPM計等のデータを解析し、各種削減策を有効に進めるため、平成11年度に連続測定装置を設置し、測定を開始しました。

caption
測定物質(合計16物質)
揮発性有機化合物
赤字は優先取組物質
ベンゼン トリクロロエチレン テトラクロロエチレン ジクロロメタン
アクリロニトリル 塩化ビニルモノマー クロロホルム 1,2-ジクロロエタン
1,3-ブタジエン トルエン m,p-キシレン o-キシレン
エチルベンゼン スチレン 1,1-ジクロロエタン 四塩化炭素
測定頻度
毎時
測定地点等

大田区東糀谷一般環境大気測定局(平成18年9月~)  ※1
江東区大島一般環境大気測定局(平成20年9月~)
環八通り八幡山自動車排出ガス局(平成11年4月~平成14年7月、平成22年10月~)
板橋区氷川町一般環境大気測定局(平成20年9月~平成30年9月、令和2年8月~)  ※2
江戸川区鹿骨一般環境大気測定局(令和2年8月~令和5年3月)
江戸川区南葛西一般環境大気測定局(令和2年8月~令和5年3月)
品川区豊町一般環境大気測定局(令和2年10月~令和5年3月)
国設東京新宿一般環境大気測定局(令和2年12月~令和5年3月)
港区白金一般環境大気測定局(平成11年9月~平成16年8月)
町田市能ヶ谷町一般環境大気測定局(平成22年9月~平成27年11月)
東大和市奈良橋一般環境大気測定局(平成22年11月~平成28年1月)

※1 令和4年4月~大田区大森へ仮移設

※2 平成22年12月~平成28年3月は板橋区本町局

測定結果

測定局別年間測定結果(月・年平均値) 
Excel形式(エクセル:87KB)

オープンデータカタログサイトにも掲載しております。 こちら

3.有害大気汚染物質のモニタリング調査の歴史

公害が大きな社会問題となった昭和40年代に、硫黄酸化物、二酸化窒素、浮遊粒子状物質、一酸化炭素、光化学オキシダントといった大気汚染物質に対して環境基準が定められました。その後、これらの大気汚染物質に加え、それ以外の化学物質についても注目されるようになりました。人為的に作られた化学物質は1千万種以上あり、さらに毎年5千から1万種ほどの物質が新しく作られているといわれています。その中には、医学的に有益な薬品などの化学物質がある一方、健康に影響を及ぼす有害な化学物質も数多くあります。

これらの物質について、国は、1996年(平成8年)に大気環境中に存在していると思われる有害性のある化学物質を234種選定しました。これらの化学物質は、大気汚染防止法の「有害大気汚染物質」に該当する可能性のある物質として、発ガン性、使用状況、大気中の検出例等を考慮し、選定されました。さらに、その中でも健康に対するリスクが高いと考えられる化学物質22種を「優先取組物質」としました。

その後、「有害大気汚染物質に該当する可能性のある物質」及び「優先取組物質」が見直され、2010年(平成22年)10月5日の中央環境審議会第9次答申により、「有害大気汚染物質に該当する可能性のある物質」として248種、「優先取組物質」として23種が選定されました。
さらに時を経て、大気汚染防止法改正により、水銀及びその化合物は2018年(平成30年)4月1日に「優先取組物質」から除かれ、「優先取組物質」は22種となりました。しかしながら、環境中を循環する水銀等の総量を地球規模で削減するという水俣条約の趣旨に則った取組の推進のため、水銀等について常時監視を実施する必要があるとされています。

東京都は、都民の健康を守るため、1997年度(平成9年度)から有害大気汚染物質の実態調査を実施しています。調査対象とする有害大気汚染物質の種類は段階的に増え、2008年度(平成20年度)からは、約100種類の物質について調査しています。これらの結果は、健康に対するリスク評価や有害大気汚染物質対策の推進に活用されています。

※ ダイオキシン類については別頁をご覧下さい → ダイオキシン類対策

記事ID:021-001-20231206-008628