橋梁等における低VOC塗装の塗膜性能追跡調査について

建築物などの屋外塗装に伴うVOC排出量は、都内VOC排出量の大きな割合を占めています。

このため、東京都ではVOC発生量の少ない塗装方法を掲載した「VOC対策ガイド(建築・土木工事編)」の発行や、塗膜性能の追跡調査結果の公表、VOC対策セミナーの開催により、低VOC塗装の普及に努めています。

都内のVOC総排出量の内訳

ここでは、低VOC塗装を施した試験パネル(鋼板)や橋梁(鋼構造物)に対して行った塗膜性能調査の結果をご紹介します。

低VOC塗装パネル試験

様々な種類の塗装(溶剤系塗装・低VOC系塗装)を施した試験パネルを用いて曝露試験を実施し、塗膜の基本的な性能について比較検討を行っています。

平成30年度からの調査(臨海部・都市部調査)

・水性塗料、ハイソリッド系塗料に加え、無機塗料に対する性能調査を開始
・臨海部に加え、自動車の排気ガス等の大気環境による塗膜への影響についても調査を開始

調査概要

(1)試験パネル曝露架台設置場所

①東京都廃棄物埋立処分場第三排水処理場(江東区海の森三丁目5番地先)
日射・塩害等の腐食環境が厳しい状況下での調査を行うため、臨海部において調査を実施

第三排水処理場

②京葉道路亀戸自動車排出ガス測定局(江東区亀戸7丁目)
自動車の排気ガス等の大気環境による塗膜への影響について調査するため、都市部において調査を実施

亀戸自排局
(2)設置試験パネル

・材質:サンドブラスト鋼板
・設置パネル枚数:各160枚ずつ
〇従来仕様・水性塗料仕様・ハイソリッド塗料仕様:
3(塗装仕様)×4(塗装系)×6※1(社)=72枚×2(枚)=144枚
〇無機塗料:
1(塗装仕様)×4(塗装系)×2※2(社)=8枚×2(枚)=16枚
【塗装方法について】
●塗装方法についての詳細は、 こちら(PDF:88KB) をご覧ください。

パネル塗装系表

※無機塗料は、硬化過程においてVOC(メタノール)が発生する。しかし、塗装仕様が各社仕様となっており、単純に各社の平均値を算出できないため、VOC量・削減率については記載していない。
●塗装仕様について
・従来仕様:塗装溶剤として、有機溶剤を使用している仕様(低VOC塗装系との比較用に実施)
・水性塗料仕様:塗料溶剤として水を使用している水性塗料を使用した仕様
・ハイソリッド塗料仕様:塗料中の不揮発分(固形分)の割合を高めたハイソリッド塗料を使用した仕様
・無機塗料仕様:溶剤を含まない無機塗料を使用した仕様
●塗装系について
・C-5(新設):橋梁等を新たに設置する際の塗装系。防食性及び耐候性に優れる。
・Rc-Ⅰ(塗替):さび、旧塗装をすべて除去し塗り替える塗装系。手間はかかるが防食性に優れる。
・Rc-Ⅲ(塗替):塗装不良(さび・割れ等)のみを除去し、塗り替える塗装系。防食性はRc-Ⅰに比べて劣る。
・Rc-Ⅳ(塗替):粉化物、汚れのみを除去し塗り替える塗装系。防食性はRc-Ⅲに比べて劣る。
●「VOC量(g/m2)」は、本調査で作成したパネルに含まれるVOC量の平均値を基に算出
●「削減率(%)」は、各塗装系における溶剤系を基準とした場合の削減率
【パネル提供】
※1一般社団法人日本塗料工業会
(関西ペイント株式会社、神東塗料株式会社、大日本塗料株式会社、中国塗料株式会社、株式会社トウペ、日本ペイント株式会社)
※2株式会社セラアンドアース、鈴木産業株式会社

8社ロゴ
(3)調査項目
調査の内容 項目 方法
塗膜劣化の評価 膨れ JIS_K5600-8-2
さび JIS_K5600-8-3
割れ JIS_K5600-8-4
はがれ JIS_K5600-8-5
視覚特性 鏡面光沢度 JIS_K5600-4-7
付着性 Xカットテープ法 旧JIS_K5400_8.5.3

調査結果

調査5年目(R5)においては、塗装の種類による性能の明確な差異は見受けられませんでした。

平成22年度からの調査(臨海部)

調査概要

(1)試験パネル暴露架台設置場所

東京都廃棄物埋立処分場第三排水処理場(江東区海の森三丁目5番地先)
日射・塩害等の腐食環境が厳しい状況下での調査を行うため、臨海部において調査を実施

パネル設置場所の写真について
(2)設置試験パネル
  • 材質:サンドブラスト鋼板
  • 設置枚数:240枚(内訳…橋梁・屋根遮熱、塗り替え・新設、溶剤系・水系等の20塗装系×6社×2枚)

【塗装仕様】

パネルの種類について記載

※備考

備考について記載

【パネル提供】
一般社団法人日本塗料工業会(株式会社トウペ、関西ペイント株式会社、神東塗料株式会社、大日本塗料株式会社、日本ペイント株式会社、中国塗料株式会社)

日本塗料協会ロゴ集
(3)調査項目
調査の内容 項目 方法
塗膜劣化の評価 膨れ JIS_K5600-8-2
さび JIS_K5600-8-3
割れ JIS_K5600-8-4
はがれ JIS_K5600-8-5
視覚特性 鏡面光沢度 JIS_K5600-4-7
付着性 Xカットテープ法 旧JIS_K5400_8.5.3

調査結果

調査7年目では、塗装系による差がみられました。
詳細結果(H29)は こちら(PDF:250KB)

橋梁における低VOC塗膜性能追跡調査

調査概要

低VOC塗装を実施した橋梁において、塗膜の光沢、膨れ、さび等の経年劣化状況を調査しています。

(1)調査対象

橋の説明
  1. 従来施工との比較により算出。
  2. 新宿区では、相生橋、宮田橋等の7か所の橋梁においてオール水性塗装を実施するなど、積極的に低VOC塗装を採用している。

(2)調査内容及び調査方法

調査の内容 項目 方法
塗膜劣化の評価 膨れ JIS_K5600-8-2
さび JIS_K5600-8-3
割れ JIS_K5600-8-4
はがれ JIS_K5600-8-5
視覚特性 鏡面光沢度 JIS_K5600-4-7
付着性 Xカットテープ法 旧JIS_K5400_8.5.3

最新の調査結果

(1)胡桃橋
平成28年度調査開始11年目の結果では、一部で「割れ」、「はがれ」が増えていました。
調査後に塗替えを実施したため、本調査は、平成28年度をもって、終了としました。
詳細結果(H28)は こちら(PDF:192KB)
(2)ごみ坂歩道橋
調査開始10年目の結果は、従来の塗装方法に劣らず、良好な状態です。
詳細結果(H30)は こちら(PDF:212KB)

記事ID:021-001-20231206-009325