43 玉川上水歴史環境保全地域

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指定データ

指定年月日 平成11年3月19日指定、平成14年3月19日区域変更
位置 玉川上水路の羽村取水口から新宿区(四谷大木戸)までの区間の水道局所管管理用地のうち開渠(かいきょ)部分
面積 653,986平方メートル

 

自然の概要

玉川上水は東京の西部、羽村市から武蔵野台地を東に縦断し、都心部へと緩やかに流れている。上水敷地両岸に連なる樹林は、名勝「小金井サクラ」に代表される植栽されたサクラと、武蔵野の面影を残す雑木林に大別される。
水道原水導水路として使用中の上流部は、両岸がサクラ植栽や草地、雑木林に大別される。清流復活区間である中流部には、名勝「小金井サクラ」があり、林床にはアズマイチゲなどの春植物も見られる。また、素掘りの法面には関東ローム層の堆積状況を観察できる箇
所もある。わずかに開渠部が残された下流部は、草地や雑木林である。

地域との連携

昭和40年(1965年)、淀橋浄水場の廃止に伴って通水されなくなった玉川上水の一部を東京都が暗渠化したことから、地域の人々を中心に、現在にいたる玉川上水保全の運動が起こった。
都市化の進展とともに、宅地化され緑の少なくなった武蔵野台地にあって、玉川上水は身近な緑の空間として、また郷土史や文学史等の歴史的背景からも、流域の人々に特別な愛着を持たれている。
このように、地域の人々との関わりが深いため、流域区市や地域の人々との連携を図り、玉川上水の保全事業を実施する。

保全の方針

武蔵野の面影を残す雑木林や名勝「小金井サクラ」、及び歴史的土木構造物である素掘りの水路について、可能な限り現況を損なうことなく後世に伝えるよう保全する。

 
植生タイプ 目標植生 保全の考え方
1 上流部
サクラタイプ
サクラ植栽
  • サクラの景観を将来的にも維持していく。
  • ソメイヨシノを中心とする現状のサクラは保全し、活力が低下したものは後継樹を育成する。
  • 将来的にはソメイヨシノを玉川上水の特徴となっているヤマザクラに変えていくことを検討する。
2 上流部
崖線林タイプ
高木二次林
(コナラ、クヌギ、シデ類などの雑木林の構成種やケヤキ等が優占する高木林)
  • 大径木のある崖線の高木二次林を将来的にも維持する。
  • 現状の高木二次林は、樹種構成や大きさを急激に変えず、水路護岸の構造物に負荷を与えないように、護岸に近い場所は低木の状態で維持し、その外側に雑木林構成種の後断樹を育成する。
3 上流部
草地・低木タイプ
草地あるいは低木林
(場所により高木を維持)
  • 植生が育成する場が限定されているため、現状の草地や低木の状態を維持する。
  • 現状で高木が生成している場所はその状態を極力維持する。
4 上流部
雑木林タイプ
高木二次林
(コナラ、クヌギ、シデ類などの雑木林の構成種やケヤキ等が優占する高木林)
  • 高木二次林を将来的にも維持する。
  • 現状の高木二次林は、樹種構成や大きさを急激に変えず、水路護岸の構造物に負荷を与えないように、護岸に近い場所は低木の状態で維持し、その外側に雑木林構成種の後断樹を育成する。
  • 常緑針葉樹が優占する高木林は、常緑針葉樹を徐々に伐採し、落葉広葉樹が優占する二次林に移行させる。
5 中流部
雑木林(広)タイプ
高木二次林
(コナラ、クヌギ、シデ類などの雑木林の構成種やケヤキ等が優占する高木林)
  • 大径木のあるが高木二次林を将来的にも維持する。
  • 現状の高木二次林は、樹種構成や大きさを急激に変えず、素堀りの水路壁面に負荷を与えないように傾斜の急な法面に近い場所は低木の状態で維持し、その外側に雑木林構成種も後断樹を育成する。
6 中流部
小金井サクラタイプ
サクラ植栽と二次林又は草地
(平坦部はサクラ植栽で水路側はケヤキ、コナラ、クヌギなどを構成種とする萌芽林、又は草地として維持)
  • 小金井クラブの保全を主としてそれに支障のない範囲で水路側に二次林又は草地を共存させる。
  • 平坦部にある小金井クラブは現状のヤマザクラを極力保全し、活力度が低下したものは後断樹の育成を検討する。
  • 現在水路側にある高木二次林は、ヤマザクラを被圧している枝や株から伐採し、素堀りの水路壁面に負荷を与えないように配慮しつつ将来的には萌芽林などとして維持する。
  • 現状で高木二次林がなく草地となっている場合は今後も二次草地として維持する。
7 中流部
サクラタイプ
サクラ植栽と二次林
(サクラ植栽木は、現状の密度を維持する。二次林は、サクラと競合しない場所で、コナラ、クヌギ、シデ類などの雑木林の構成種や、ケヤキ等を優占する状態を維持する)
  • サクラの保全を優先し、それと競合しない場所で二次林を保全し共存させる。
  • サクラは現状の個体を保全し、活力度が低下したものは後断樹を育成していく。
  • 現状の高木二次林は、将来的に二次林として維持する。
  • 傾斜の急な法面にある倒木の危険性の高い樹木は除伐し、比較的安定した平坦部に後断樹を育成することなどにより、素堀りの水路壁面に負荷を与えないように配慮する。傾斜の急な法面は、樹木を低木の状態で維持する
8 中流部
雑木林(狭)タイプ
二次林
(コナラ、クヌギ、シデ類などの雑木林の構成種やケヤキ等が優占する二次林)
  • 現状の高木二次林は、将来的に二次林として維持する。
  • 傾斜の急な法面にある倒木危険性の高い樹木は除伐し、比較的安定した平坦部にこ後断樹を育成することにより、素堀りの水路壁面に負荷を与えないように配慮する。傾斜は急な法面は、樹木を低木の状態で維持する。(雑木林の構成種ではない場所は徐々に移行させる。)
9 中流部
針広混交林タイプ
二次林
(コナラ、クヌギ、シデ類などの雑木林の構成種やケヤキ等が優占する二次林)
  • 常緑針葉樹が優占する高木林から落葉広葉樹が優占する二次林に移行させる。
  • 傾斜の急な法面にある倒木の危険性の高い樹木は除伐し、比較的安定した平坦部に後断樹を育成することなどにより、素堀りの水路壁面の負荷を与えないように配慮する。
  • 傾斜の急な法面は、樹木を低木の状態で維持する。
10 下流部
草地・低木林タイプ
サクラ植栽と疎林や草地及び萌芽林
(サクラ植栽は密度の高い場所と低い場所があり現状の密度を維持する。疎林や草地は現状を維持し、雑木林構成種が多い場所は萌芽林として維持する)
  • 落葉広葉樹の疎林や草地は、つる植物や草木が繁茂しすぎないように管理し現状を維持する。
  • 雑木林の構成種が多い場所は萌芽に移行する。
  • 現在サクラのある場所はその景観を保全し活動力が低下したものは後断樹を育成していく。
記事ID:021-001-20231206-009201