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平成11年12月3日 問い合わせ先
環 境 保 全 局 東京都環境科学研究所基盤研究部
電話 03−3699−1331
東京都環境科学研究所年報の発行と公開研究会の開催
東京都環境科学研究所では、このたび、平成10年度の研究成果をまとめた「1999東京都環境
科学研究所年報」を発行しましたのでお知らせします。
本年報には34件の論文を掲載しております。このうち、都民が特に関心をもたれると思われる調
査研究として、次の4件について要約を添付しましたのでご参照ください。
(1) 自動車対策編 :「自動車からの有害大気汚染物質の排出量」
(2) 地球環境編 :「生産中止後の都内フロンの大気濃度について」
(3) 水質土壌環境編 :「東京都内湾の水質の長期変動傾向について」
(4) 生態動植物影響編:「甲州街道街路樹につくコケの生態と環境要因について」
また、最近の研究活動について、下記のとおり公開研究発表会を開催いたします。
平成11年度「東京都環境科学研究所公開研究発表会」の開催について
日 時: 平成12年1月14日(金)午後1時15分〜4時30分
場 所: 都庁議会棟1階「都民ホール」
対 象: 一般都民ほか
予約不要(先着250名)
自動車からの有害大気汚染物質の排出量
(第5部、応用研究部 自動車対策編)
1 調査の目的
有害大気汚染物質に挙げられているベンゼンやアルデヒド、多環芳香族炭化水素(以下、
PAHsという)は、都市部では自動車が主要な発生源とみられている。これら物質の一部
の環境大気中濃度は環境基準値等を超える状況にあり、その排出抑制施策が求められている。
当研究所では、平成10年度より自動車からの有害大気汚染物質排出量の把握調査を実施し
ている。今回は当所のシャーシダイナモメータを用いて、実走行条件でのベンゼンやアルデ
ヒド類などの排出量を調査した。
2 結果
(1)自動車からの排出量
都市部の平均的な走行条件を模した東京都実走行パターンにおけるベンゼンやアルデヒ
ドの排出量(排出係数)は次の通りであった。
1)ベンゼン:
ガソリン車からの排出量は0.06〜35mg/km(4台の平均13.5mg/km)であった。ガソリン
車は車両による差異が大きい。排出量の多かった軽貨物車の排出ガス対策は排気再循環
(EGR)と酸化触媒装置であり、排出量の最も少なかった車両は筒内直接噴射方式エン
ジンを搭載した乗用車でEGRと三元触媒を装着していた。
ディーゼル車からの排出量は1.4〜30mg/km(9台の平均8.2mg/km)で、燃料(軽油)に
はベンゼンがほとんど含有されていないが、ベンゼンの排出が認められた。
2)アルデヒド:
ガソリン車では、ホルムアルデヒドが0.1〜2.5mg/km(平均1.2mg/km)、アセトアルデ
ヒドは1.6〜3.9mg/km(平均3.0mg/km)であった。
ディーゼル車では、ホルムアルデヒドが11〜620mg/km(平均240mg/km)、アセトアルデ
ヒドは 16〜190mg/km(平均90mg/km)であり、いずれもガソリン車に比べ極めて高い排出
量となっている。
(2)都内における有害大気汚染物質の年排出量
上記測定値から、自動車から排出されるベンゼンとアルデヒドの都内全域における年間
排出量の試算を行った。
1)ベンゼンの排出量は430tで、約80%がガソリン車から排出されている。
2)アルデヒドは、ホルムアルデヒドが2200t、アセトアルデヒドが930tの排出で、ディ
ーゼル車からの排出がホルムアルデヒドで約98%、アセトアルデヒドで約89%を占める結
果となった。
自動車排出ガス中のベンゼンやアルデヒドをシャーシダイナモメータを用いて排出係数
の調査を行い、これを基に都内の自動車からの年排出量を試算した。
ガソリン車からは予想通りベンゼンの排出が確認され、排出ガス対策の種類によって排
出係数に大きな差があった。一方、ベンゼンをほとんど含まない燃料(軽油)を使用する
ディーゼル車からもベンゼンが排出されていることが確認された。
ディーゼル車からのアルデヒドの排出係数はガソリン車より極めて高く、年排出量は自
動車から排出されるアルデヒドの約9割以上を占める試算となった。
(参考資料)
◎自動車からのベンゼンの排出量
ガソリン車(車両記号A〜D)は、排出ガス対策の違いにより排出量に大きな差が見られる。
なお、図中の除ベンゼンは、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素を示す。
ディーゼル車(車両記号E〜N)は、車両による排出量差が小さく車両Lを除くと1.4〜8.3
mg/kmの範囲にある。
芳香族炭化水素の排出量(画像:24KB)
◎自動車からのアルデヒドの排出量
ガソリン車からのアルデヒドの排出は、いずれの車両とも4mg/km以下であった。
ディーゼル車からのアルデヒドの排出量は、ガソリン車に比べ極めて高い排出量となってい
る。
アルデヒドの排出量(画像:33KB)
◎有害大気汚染物質の大気環境濃度と基準値
自動車由来と思われる主な有害大気汚染物質について、東京都一般環境測定局9地点の平均
濃度(平成10年度)と基準値等を以下に示す。
(単位:μg/立方m)
+−−−−−−−−+−−−−−−+−−−−−−−−−−+
| 物 質 名 |大気環境濃度| 基準値等 |
+−−−−−−−−+−−−−−−+−−−−−−−−−−+
|ベンゼン | 4.7 | 3 (環境基準)|
|ホルムアルデヒド| 3.9 | 0.8 (米EPA)|
|アセトアルデヒド| 3.4 | 5 (米EPA)|
+−−−−−−−−+−−−−−−+−−−−−−−−−−+
生産中止後の都内フロンの大気濃度について
(第4部、応用研究部 地球環境編)
1 調査の経緯と目的
特定フロンについては、生産規制だけではなく、現在、存在するフロン類を如何に回収し、
安全に破壊できるかが重要な課題となっている。東京都は1992年に「東京都地球環境保全行
動計画」を策定し、特定フロンの回収、及び破壊等の対策に取り組んできた。この対策の効
果を確認する目的で、都内3地点(町田、都庁、環研)において1988年度から3種類の特定
フロンの大気環境濃度をモニタリングしている。本報告では生産中止以降を含め、都内のフ
ロン濃度の動向と課題について検討した。
2 結果
(1)1997年度の都内3地点の平均濃度は、フロン12(0.69ppb)>フロン11(0.63ppb)>フロン
113(0.14ppb)の順であった。
(2)都内のフロン濃度の経年変化は、この10年間に全体的には減少傾向にあり、フロン12、
フロン113はバックグラウンドレベル(気象庁:岩手県綾里)とほぼ同一の濃度にまで低下
してきた。これは生産中止と回収の効果が現れていると考えられる。
しかし、フロン11については低減傾向は見られず、バックグラウンドレベルの約2倍程
度の値で推移している結果が得られた。
3 今後の課題
主要用途が洗浄剤や冷媒であるフロン12、フロン113は対策の効果が現れてきており、今
後とも、回収・破壊に努める必要がある。一方、断熱材の発泡剤として使用されているフロ
ン11は、処理方法や回収方法が確立されていないのが現状である。このようなフロン対策の
効果をみるためにも、今後も都内におけるフロン測定を長期的に継続する必要がある。
生産規制後の一般環境の特定フロン濃度を測定した結果、フロン12、フロン113はバック
グランウンドレベルまで低下し、生産中止・回収効果が確認できた。
しかし、断熱材の発泡剤として使用されているフロン11は低減傾向が見られず、今後は、
対策が遅れているフロン11の回収・処理方法の確立が重要になると考えられる。
一般大気環境中のフロン濃度測定から、今回初めてこの知見が得られた。
(参考資料)
図1 フロン濃度の経年変化(環境科学研究所)(画像:34KB)
フロン12、フロン113は生産規制時(1995年12月末に生産停止)から濃度が低下してい
たことが分かる。
図2 岩手県綾里との比率(画像:29KB)
環境科学研究所測定点において、フロン113は1998年度には綾里(バックグラウンドレ
ベル)との差がほとんどなくなった。これに対し、フロン11は生産中止後も綾里の2倍程
度の割合を保ち続けている。
表1 フロンの用途と国内出荷量
(単位:万トン)
+−−−−−−+−−−+−−−−−−−+
|フロンの種類|主用途| 国内出荷量 |
| | |(1986−1996)|
+−−−−−−+−−−+−−−−−−−+
| フロン11 |発泡剤| 21.86 |
+−−−−−−+−−−+−−−−−−−+
| フロン12 |冷 媒| 26.85 |
+−−−−−−+−−−+−−−−−−−+
| フロン113 |洗浄剤| 47.65 |
+−−−−−−+−−−+−−−−−−−+
東京都内湾の水質の長期変動傾向について
(第2部、基盤研究部 水質・土壌環境編)
1 研究の経緯と目的
東京湾では1979年以来4次にわたりCODの総量規制が導入されてきた。しかし水域によ
っては依然として水質環境基準が十分達成されない状況にあり、2000年度からは新たに窒素・
りんを指定項目に追加した第五次総量規制の実施が検討されている。
当研究所では従来から国や他県の研究機関と共同で公共用水域の水質測定データを収集整
理し、東京湾の水質汚濁現象を統計的に解析する研究を行ってきた。今回は、季節調整法を
水質測定データに適用し、東京都の地先海域である東京都内湾の水質の長期変動傾向を明ら
かにし、これまでに実施された汚濁負荷量削減対策等との関連について検討した。
2 結 果
(1) 東京湾では、1970年代末から今日までの20年間に発生負荷量として、CODとりんは約
1/2、窒素(T-N)は約3/4に削減されたと算定されている。
(2) 東京湾に流入する主要河川のうち、多摩川や隅田川など過去に汚濁物質濃度が高かった
河川では、この間、水質の改善傾向が認められた。
(3) 有機汚濁の指標であるCODの濃度は、1970年代に低下したが、それ以後は、上下変動
を繰り返し、近年はやや上昇する傾向を示している。
(4) 富栄養化の原因物質である窒素の濃度は、1985年頃まで上昇した後、やや低下する傾向
を示したが、現在ではほとんど濃度変化が見られない。
(5) 富栄養化原因物質であるりんの濃度は、上層では1985年頃まで、下層では1990年代まで
濃度の低下傾向が認められたが、現在は下げ止まりの状況にある。
(6) 東京都内湾の8測定地点のうち、下水処理場に隣接する地点(St.23)では、他地域と
異なり、1990年代に入ってからもほとんどの水質項目で濃度の上昇傾向が続いている。
3 今後の課題
汚濁負荷量削減対策の効果予測や判定を精度良く行うためには、海域の汚濁物質流入量や
現存量を把握する必要があり、そのための研究を今後行っていく予定である。
東京湾では汚濁物質の発生負荷量が20年間で約50%も削減されたにもかかわらず、この間
の東京都内湾の水質データからは、はっきりとした浄化傾向は認められなかった。
汚濁負荷量削減対策の効果予測や判定を精度良く行うためには、汚濁物質の挙動を量的に
把握する必要がある。
(参考資料)
図1 東京都内湾の水質測定地点(画像:45KB)
図2 東京都内湾中央部(St.25)における水質の長期変動傾向(画像:56KB)
季節調整法:
観測された時系列データから大局的動向を示すトレンド成分と周期的変動を示す季節成分を
分離する統計的手法で、景気動向の解析などに良く利用される。
今回の水質データの解析では、
水質測定データ=トレンド成分+季節変動(12ヶ月周期)成分+不規則変動成分
とモデル化し、約20年間の各月データを3成分に分離した。
甲州街道街路樹につくコケの生育と環境要因について(第1報)
−コケの生育状況と主要な環境条件の把握−
(第3部 基盤研究部 生態・動植物影響編)
1 調査の経緯と目的
当研究所では、都市の大気環境変化と植物の生育との関係について継続的に調査している。
二酸化硫黄による大気汚染が改善されると、都市部の大きな公園を中心としてケヤキの樹勢
や、木につくコケの生育が回復してきた。
一方で、都市化の進行による気温の上昇にともなって大気の乾燥化が進み、都市植物の生
育に大きな影響を与えている可能性があると考えられた。
そこで、水分を全面的に雨や霧などに頼っているコケに着目し、甲州街道街路樹につくコ
ケの生育実態を1997-98年度に調査し、大気汚染や温湿度との関係について検討した。
2 調査結果
(1)コケの種数や被度(木の幹を被う程度)は、新宿から高尾に向かって増加する傾向にあ
った。しかし、中核都市の府中や八王子ではやや低下し、飛行場跡地に隣接する調布では
増加した。
(2)コケの生育状況と気温及び湿度との間には良い相関関係が認められた。
(3)気温は、高尾と新宿の年平均で1.7゜Cの差があった。このうちの0.7゜C(40%)は標
高差によるもので、1.0゜C(60%)が人間活動(都市化)によるものと見られる。
(4)気温と相対湿度はともにコケ生育に影響を与えていると考えられた。コケには根がない
ことから、水分条件の影響が大きいものと推察された。
3 今後の課題
大気環境の生育条件が良好でも宅地開発などにより周辺環境が頻繁に変化する場所では、
コケはなかなか発生しない。反対に新興住宅地でも街の緑が豊かになり環境が安定してくる
とコケが発生する。このように、樹幹のコケをみることにより都市環境を評価できると考え、
その方法について検討している。
新宿から高尾まで、街路樹につくコケの生育状況を調査した。気温・湿度とコケ生育の間
に良い関係が認められた。二酸化硫黄濃度が低下した現在では、都市化の進行による大気の
乾燥化が植物の生育にとって、相対的に大きな要因になっていることがわかった。なお、木
につくコケは都市環境の指標のひとつとして利用できそうである。
(参考資料)
図1 高尾〜新宿の湿度と気温の地域差(画像:53KB)
図2 高尾〜新宿の被度と種数(画像:71KB)
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